2009年10月19日
官能珈琲
表参道にある某珈琲店は、
そんなにコーヒー好きでもなく煙草も苦手なわたくしが
気に入っている店でございます。
その理由は、店主のコーヒーを入れる手つきがエロいからです。
注文を受けると、後ろの戸棚からカップを取り出し、
カウンターに起きます。
昔ながらの計量器で量った豆をアルミカップに入れ、ミルで挽きます。
挽いた豆をネルに入れ、
沸かしたお湯を入れたポットから細く細くお湯を注ぎます。
ネルを持つ手はネルの先端を軸にゆっくりコマが回るが如く動かし、
ポットを持つ手はゆったりと上下しつつもお湯の量は少しずつ。
注ぎ終わると、専用鍋に入れたコーヒーをカップに注ぎ、
客に出されます。
この店では豆の量と水の量が5種類の中から選べまして、
わたくしは少しでも長く恍惚としていたいがために、
水の量が一番多いコーヒーを頼みます。
そしてネルを動かすなめるような手つきを見つめるのです。
もっとお湯を注いでもいいのに、じらすように細く垂らすだけ。
初めは蒸らされていた豆もお湯が注がれるにつれ、
ネルから一滴、また一滴と滴り落ちてゆきます。
官能的な手作業によるエロスを凝縮したようなコーヒーが来た時点で
わたくしはもう昇天しているのです。
カウンターには店主ともう1人がいるのですが、
この2人の連係プレーも素晴らしいのです。
言葉は交わさずとも、相手の動作で次の作業を読み、
決して同じものに手を触れることはありません。
1人が豆を量れば、1人がお湯の準備をする。
1人が豆が挽き終わったところで1人がネルを出す。
この一連の行程を見るためだけにカウンターに座るのです。
ああ、また行きたくなってきました。